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『親友×親友=親友』
上野公園のベンチに二人並んで腰かけて、
たくさんの行き交う人たちを、ぼんやり眺めていた。
いつも広々としている噴水の前の広場には、
地域フェアのイベントテントと、人で埋め尽くされていた。
晴れ空の下に、たくさんの家族が集まって、
公園の落ち葉のように笑顔を散りばめていた。
それを眺める自分たち。
よくあることではあるけれど、
二人のまわりだけ少し色褪せていた。
「最後、上野公園に付き合ってほしい。」
そう言いだしたのは、自分だった。
本当は、いままで行ったところ、まわりたい。
けど、行ったところが幅広くて、とても振り返ってられない。
少なくとも、いまこの場所、都会の片隅にある、
小さなファストフード店で、俺たちの最期を迎えたくない。
せめて、想いのある場所で終わらせたい。
自分が望んでいたものが、やっと手に入った。
ちゃんと、振られることができた。
もう、これで、思い残すことはない。
孝介にサブローちゃんのことを問いただしたりしている姿、
傍から見て本当にみっともないとしか言いようがなかった。
「気持ちが不透明なのが一番不安なんだよ!」
「なんで?なんで不透明じゃだめなの?」
「えっ……。」
「今日誰と何したとか、いちいち報告するのって、なんか違うと思う。」
「そうじゃなくて………。」
たしかに、サブローちゃんのことはそうじゃないかもしれないけど、
自分が孝介に一番してほしかったことって、そうだったんだと思う。
ただ、独占したいだけ。
今日誰と会うんだよとか、何したんだよとか、
大地のために泊まりはしないよとか、酒は呑まないよとか、
誕生日はお前のためにあけておくよとか、クリスマスは…とか、
結局は、そういう仮恋人のようなことがしてほしかったんだと思う。
もう、これ以上、孝介を悩ませることはできない。
それに、自分もこれ以上悩んで、孝介を傷つけたくない。
やっぱり、少し距離を置こうって。
上野公園へ向かう途中の電車、思い出話をした。
いままで行ったとこ全部まわったらどれくらいかかるんだろうね。
いちばん北は、あれっしょ、群馬。
でー、いちばん東は…うん、大竹海岸だ。
いちばん西が…横田基地、かな?
それで、いちばん南が定かじゃない…陶芸やった経堂?だろうな。
ほかにも、あそこ行ったり、ここ行ったり、したね。ははは。
孝介は、黙ってうなずいていた。
俺は、それをわかって一人でずっとしゃべっていた。
上野公園の蓮見茶屋で、初めて先輩のこと話してくれてさ、
そこで決意を固めて、はじめて孝介にデコチューしたりしたな。ははは。
上野公園で、ひとしきりぼんやりした後、
ゆっくりと、ゆっくりと歩きながら、上野駅に向かった。
二人どっちも、しゃべろうとしなかった。
このまま五感のすべてにおいて、
孝介をあまり感じることのないまま、
別れたいなと思いながら歩いていた。
…
キッ!
車のブレーキ音と孝介の声で意識を取り戻す。
ぼんやりしすぎて、あやうく車にひかれるところを、孝介が引き寄せてくれた。
孝介の雰囲気。
優しいまなざし。
危ないぞと言う声。
すべてが体に染み渡っていく。
悲しいよ、孝介。
改札を通って、ホームに降りる階段の前まで来て、
無言のまま、どちらが言い出すでもなく立ち止まって、
それでも、お互いの顔を見ずに適当なところを見てる。
「見送るよ。」
鼻がツーンとして目が赤くなってきたから、
早く帰ったほうがいいなと思って、そう声をかけた。
「ここで、いいよ。」
孝介も、俺の目を見て、そう静かに言った。
「見送らせてほしい。」
「いいよ、ここで、いいよ。」
こういうときには孝介は絶対譲らない。
「わかった。じゃあね。」
「おう。」
「…孝介。」
お互いの方向へ歩き出す前に、声をかけた。
「最後に、しっかり抱きしめさせて。」
孝介は何も答えなかったが、ほんの少しだけ腕を広げてくれた。
俺は、しょっていたエナメルバッグを床に放り投げて、
二人の体温が混ざるのを感じながら、そっと抱きしめた。
こうやって抱きしめると、胸元に顔がくる。
小さく鼓動が聞こえるぐらいの、胸の位置。
普段は意識してないけど、こんなに身長差があるんだな。
孝介、あったかいな。
やわらかくて、あったかい。
抱きしめたときと同じくらい、そっと離れる。
「それじゃ、な。」
「うむ。」
俺はすでに涙がほほをつたっていたけど、
孝介には悲しい気持ちにさせちゃいけないと思って、
できていたかわからないけど、笑ってみせた。
孝介は、目こそ潤んでいなかったけど、神妙な面持ちで頷いた。
孝介が踵を返して、去っていく。
(…孝介。)
(孝介。)
「孝介!!!!」
上野駅の時間が、一瞬止まった。
俺の声に反応して、孝介が足を止める。
でも、振り返らない。
我慢してくれていたんだよね、でも、ごめんよ。
もう一度だけ、あともう一度だけ抱きしめさせてほしいんだ。
肩を震わせて涙を流している孝介の元へ走っていって、
今度は、自分の最後の気持ちをぶつけるように、強く抱きしめた。
号泣しながら、抱きしめ合う。
大地と孝介の、最後の抱擁。
そしてまた、抱きしめたときと同じような強さで離れて、お互いの道へ歩き始めた。
放り出した荷物を拾い上げて、泣きながら階段をかけ降りる。
追いかけたい。追いかけたいよ。追いかけたくてたまらない。
ごめん。ごめんよ孝介。本当にごめんなさい。
親友×親友≠恋人
【終】
たくさんの行き交う人たちを、ぼんやり眺めていた。
いつも広々としている噴水の前の広場には、
地域フェアのイベントテントと、人で埋め尽くされていた。
晴れ空の下に、たくさんの家族が集まって、
公園の落ち葉のように笑顔を散りばめていた。
それを眺める自分たち。
よくあることではあるけれど、
二人のまわりだけ少し色褪せていた。
「最後、上野公園に付き合ってほしい。」
そう言いだしたのは、自分だった。
本当は、いままで行ったところ、まわりたい。
けど、行ったところが幅広くて、とても振り返ってられない。
少なくとも、いまこの場所、都会の片隅にある、
小さなファストフード店で、俺たちの最期を迎えたくない。
せめて、想いのある場所で終わらせたい。
自分が望んでいたものが、やっと手に入った。
ちゃんと、振られることができた。
もう、これで、思い残すことはない。
孝介にサブローちゃんのことを問いただしたりしている姿、
傍から見て本当にみっともないとしか言いようがなかった。
「気持ちが不透明なのが一番不安なんだよ!」
「なんで?なんで不透明じゃだめなの?」
「えっ……。」
「今日誰と何したとか、いちいち報告するのって、なんか違うと思う。」
「そうじゃなくて………。」
たしかに、サブローちゃんのことはそうじゃないかもしれないけど、
自分が孝介に一番してほしかったことって、そうだったんだと思う。
ただ、独占したいだけ。
今日誰と会うんだよとか、何したんだよとか、
大地のために泊まりはしないよとか、酒は呑まないよとか、
誕生日はお前のためにあけておくよとか、クリスマスは…とか、
結局は、そういう仮恋人のようなことがしてほしかったんだと思う。
もう、これ以上、孝介を悩ませることはできない。
それに、自分もこれ以上悩んで、孝介を傷つけたくない。
やっぱり、少し距離を置こうって。
上野公園へ向かう途中の電車、思い出話をした。
いままで行ったとこ全部まわったらどれくらいかかるんだろうね。
いちばん北は、あれっしょ、群馬。
でー、いちばん東は…うん、大竹海岸だ。
いちばん西が…横田基地、かな?
それで、いちばん南が定かじゃない…陶芸やった経堂?だろうな。
ほかにも、あそこ行ったり、ここ行ったり、したね。ははは。
孝介は、黙ってうなずいていた。
俺は、それをわかって一人でずっとしゃべっていた。
上野公園の蓮見茶屋で、初めて先輩のこと話してくれてさ、
そこで決意を固めて、はじめて孝介にデコチューしたりしたな。ははは。
上野公園で、ひとしきりぼんやりした後、
ゆっくりと、ゆっくりと歩きながら、上野駅に向かった。
二人どっちも、しゃべろうとしなかった。
このまま五感のすべてにおいて、
孝介をあまり感じることのないまま、
別れたいなと思いながら歩いていた。
…
キッ!
車のブレーキ音と孝介の声で意識を取り戻す。
ぼんやりしすぎて、あやうく車にひかれるところを、孝介が引き寄せてくれた。
孝介の雰囲気。
優しいまなざし。
危ないぞと言う声。
すべてが体に染み渡っていく。
悲しいよ、孝介。
改札を通って、ホームに降りる階段の前まで来て、
無言のまま、どちらが言い出すでもなく立ち止まって、
それでも、お互いの顔を見ずに適当なところを見てる。
「見送るよ。」
鼻がツーンとして目が赤くなってきたから、
早く帰ったほうがいいなと思って、そう声をかけた。
「ここで、いいよ。」
孝介も、俺の目を見て、そう静かに言った。
「見送らせてほしい。」
「いいよ、ここで、いいよ。」
こういうときには孝介は絶対譲らない。
「わかった。じゃあね。」
「おう。」
「…孝介。」
お互いの方向へ歩き出す前に、声をかけた。
「最後に、しっかり抱きしめさせて。」
孝介は何も答えなかったが、ほんの少しだけ腕を広げてくれた。
俺は、しょっていたエナメルバッグを床に放り投げて、
二人の体温が混ざるのを感じながら、そっと抱きしめた。
こうやって抱きしめると、胸元に顔がくる。
小さく鼓動が聞こえるぐらいの、胸の位置。
普段は意識してないけど、こんなに身長差があるんだな。
孝介、あったかいな。
やわらかくて、あったかい。
抱きしめたときと同じくらい、そっと離れる。
「それじゃ、な。」
「うむ。」
俺はすでに涙がほほをつたっていたけど、
孝介には悲しい気持ちにさせちゃいけないと思って、
できていたかわからないけど、笑ってみせた。
孝介は、目こそ潤んでいなかったけど、神妙な面持ちで頷いた。
孝介が踵を返して、去っていく。
(…孝介。)
(孝介。)
「孝介!!!!」
上野駅の時間が、一瞬止まった。
俺の声に反応して、孝介が足を止める。
でも、振り返らない。
我慢してくれていたんだよね、でも、ごめんよ。
もう一度だけ、あともう一度だけ抱きしめさせてほしいんだ。
肩を震わせて涙を流している孝介の元へ走っていって、
今度は、自分の最後の気持ちをぶつけるように、強く抱きしめた。
号泣しながら、抱きしめ合う。
大地と孝介の、最後の抱擁。
そしてまた、抱きしめたときと同じような強さで離れて、お互いの道へ歩き始めた。
放り出した荷物を拾い上げて、泣きながら階段をかけ降りる。
追いかけたい。追いかけたいよ。追いかけたくてたまらない。
ごめん。ごめんよ孝介。本当にごめんなさい。
親友×親友≠恋人
【終】
コメント
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nadさんへ
ずっと読んでくださってて、ありがとうございます。
思えば吐き出す場所が欲しくて始めたこのブログ。
いつのまに、こんなに多くの人が応援してくださってました…。
最初からわかっていた結末なのかも。
しょせん、友達は友達なことぐらいわかってた。
だって自分がそういう人間なんだもの。
友達は友達。
はやいとこ、気持ち忘れなきゃです。
思えば吐き出す場所が欲しくて始めたこのブログ。
いつのまに、こんなに多くの人が応援してくださってました…。
最初からわかっていた結末なのかも。
しょせん、友達は友達なことぐらいわかってた。
だって自分がそういう人間なんだもの。
友達は友達。
はやいとこ、気持ち忘れなきゃです。
しげる君へ
ありがとう。
ハッピーエンド迎えられたらよかったな。
またメールするね。いつもありがとう。
ハッピーエンド迎えられたらよかったな。
またメールするね。いつもありがとう。
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そーすけさんへ
共感してくださってありがとうございます!
ブログ、拝見させていただきました
こんな想いをどれだけのひとが経験してきたのか。
そう思うとやりきれなくなります…。
いまはどいしたらいいのか悩みは尽きませんが、なんとかやってます
もしつらくなったら、メールさせてください
ほんとに、ありがとうございます。
ブログ、拝見させていただきました
こんな想いをどれだけのひとが経験してきたのか。
そう思うとやりきれなくなります…。
いまはどいしたらいいのか悩みは尽きませんが、なんとかやってます
もしつらくなったら、メールさせてください
ほんとに、ありがとうございます。
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